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電子帳簿保存法への対応状況の総点検

はじめに

令和6年1月から完全義務化された電子帳簿保存法の電子取引データ保存。義務化から1年半以上が経過し、多くの会社で対応が一段落したように見えますが、実は税務調査の現場では、対応の甘さを指摘されるケースが増えています。

本稿では、電子帳簿保存法の対応状況を総点検する観点から、よくある対応漏れと、税務調査での指摘ポイントを整理します。

論点1:電子取引データの範囲

電子取引データとは、電磁的方式により授受した取引情報を指し、以下のようなものが該当します(電子帳簿保存法第2条第5号)。

  • 電子メールに添付された請求書、領収書のPDF
  • クラウドサービス(Amazonビジネス、楽天ビジネス等)からダウンロードする領収書
  • EDI取引のデータ
  • インターネットバンキングの取引明細
  • クレジットカード会社からダウンロードする利用明細

見落とされやすい電子取引

特に見落とされやすいのが、ETCの利用明細、電子マネーの利用記録、サブスクリプションサービスの請求書(Slack、Zoom、Microsoft 365等)です。これらは「データを受け取った」という意識が薄いため、紙でプリントアウトして保存しているケースが多く見られます。

しかし、原本はあくまで電子データであり、電子データでの保存が必要です。

論点2:保存要件の遵守

電子取引データの保存には、以下の要件をすべて満たす必要があります(電子帳簿保存法施行規則第4条)。

真実性の確保

以下のいずれかの措置を講じる必要があります。

  • タイムスタンプを付与する
  • 訂正・削除の履歴が残るシステムを使用する
  • 訂正・削除を防止する事務処理規程を備え付ける

中小企業では、コスト面から「事務処理規程」を選択するケースが多いです。国税庁が雛形を公表していますので、これをベースに自社の実態に合わせてカスタマイズすることが推奨されます。

可視性の確保

  • ディスプレイ・プリンターおよびこれらの操作マニュアルの備付け
  • 検索機能の確保(取引年月日、取引金額、取引先での検索)

検索機能については、ファイル名に「年月日_金額_取引先」を含める方法、または索引簿を作成する方法のいずれかで対応できます。

論点3:税務調査での指摘ポイント

電子帳簿保存法の対応について、税務調査では以下のような指摘がなされることが多くなっています。

ありがちな指摘事例

  • PDFの請求書を紙にプリントアウトして保存しているが、原本データを保存していない
  • 検索可能な形でファイル名が整理されていない(例:「請求書.pdf」のような名前)
  • 事務処理規程は備え付けているが、実態と乖離している
  • クラウドサービスの請求書を保存忘れしている

特に「事務処理規程と実態の乖離」は、形式的な対応にとどまっている会社で多く見られる指摘です。規程上は「経理担当者が毎月チェックする」となっているのに、実際にはチェックしていないというパターンです。

実務上の留意点

  • 電子取引の発生源を一覧化する(メール、クラウド、サブスク等)
  • ファイル名の付与ルールを社内で統一する
  • 事務処理規程は実態に即した内容にカスタマイズする
  • 年に1回、保存状況の社内点検を実施する

塩野公認会計士事務所の見解

電子帳簿保存法は、義務化から1年半が経過し、税務調査での「お試し期間」も終わりつつあります。今後は対応の甘さが指摘される可能性が高くなります。

特に重要なのは、「制度は理解していても、運用が甘い」状態を放置しないことです。当事務所では、電子帳簿保存法の対応状況を点検し、改善ポイントを洗い出すサービスも提供しております。社内点検の機会としてご活用ください。

※ 本記事は執筆時点の法令・通達等に基づき作成しております。最新の制度や個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、実務への適用にあたっては最新情報をご確認ください。ご不明点があればお気軽にご相談ください。