【シリーズ】太陽光発電の行政手続きとフェーズ別の実務
- 【前編】改正行政書士法と新規認定申請(本記事)
- 【中編】運転開始準備・期中運用
- 【後編】承継・卒FIT・事業廃止
「今まで自社でMETIへの申請を代行していたが、2026年1月から続けられなくなった」
「販売会社に申請を任せていたが、行政書士でないと違法になると聞いた」
太陽光発電の事業者や販売施工会社の間で、こうした声が急速に広がっています。背景にあるのは、2026年1月1日に施行された改正行政書士法です。改正のポイント自体はシンプルですが、太陽光発電のFIT/FIP認定申請の実務においては、これまで慣例的に行われてきた「代行申請」の一部が行政書士法違反となる可能性が明確になったことから、事業者・販売施工会社の双方が対応を迫られています。
本シリーズでは、太陽光発電事業のライフサイクルを6つのフェーズに分けて、それぞれのフェーズで必要となる申請書類と、外部から有償で作成を受託する場合に行政書士業務に該当し得る手続きを、公認会計士・行政書士として整理してご説明します。
前編にあたる本記事では、太陽光発電のMETI(経済産業省)への申請に関する制度、2026年1月1日の改正行政書士法によって何が変わったのか、そして【フェーズ1】新規申請フェーズで必要となる書類と手続きを取り上げます。
太陽光発電のMETI申請とは
太陽光発電を含む再生可能エネルギー発電設備で、FIT(固定価格買取制度)またはFIP(市場価格連動型プレミアム制度)の対象となる売電を行うためには、経済産業省(資源エネルギー庁)による事業計画認定を受ける必要があります。これがいわゆる「METI申請」と呼ばれる手続きです。
認定申請の具体的な方法や審査手続きは、発電設備の区分、出力規模および申請内容により異なります。申請は原則として「再生可能エネルギー電子申請」システムを通じて行いますが、手続きの種類や個別事情により書面提出を求められる場合があります。電子申請に当たっては、手続き区分に応じてGビズIDその他の利用者アカウントを事前に準備する必要があります。
2026年1月1日 - 改正行政書士法が施行
2026年(令和8年)1月1日、改正行政書士法が施行されました。今回の改正の柱のひとつは、行政書士の業務制限規定の明確化です。
違反した場合の罰則も定められています。行政書士でない者が業務制限に違反した場合、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が科される可能性があります。加えて、行政書士でない法人に所属する役員・従業員が違反行為を行った場合には、行為者本人だけでなく法人も処罰の対象となる「両罰規定」の整備も行われました。
誤解のないよう補足しますと、行政書士法が改正されたことで、新たな独占業務が創設されたわけではありません。従来から存在していた行政書士法上の業務範囲について、商品代金・手数料・コンサル料等に含めた形で受領する場合も「報酬」に該当し得る点が、実務上より明確に整理された、というのが今回の改正の位置付けです。
太陽光申請の実務が具体的にどう変わったか
改正行政書士法の施行を受け、資源エネルギー庁は太陽光発電のFIT/FIP認定申請に関する委任状の様式を改定しました。2026年1月1日以降に認定申請または変更認定申請・届出を行う場合、事業者は改定後の新様式(令和8年1月1日以降版)の委任状を使用することが求められます。
資源エネルギー庁の公式ホームページにも、「行政書士または行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反となりますのでご注意ください」と明記されています。単なる注意喚起にとどまらず、認定申請の運用上の前提となる方針が示された形です。
本シリーズで扱うフェーズの全体像
太陽光発電事業のライフサイクルは、大きく6つのフェーズに分けることができます。フェーズごとに求められる申請書類と、行政書士業務に該当し得る手続きを整理することで、必要な準備と業務分担が見えやすくなります。
- 【フェーズ1】新規申請フェーズ(本記事)― 事業計画認定を取るまで
- 【フェーズ2】運転開始準備フェーズ(中編)― 認定〜運転開始
- 【フェーズ3】期中運用フェーズ(中編)― 運転開始〜買取期間中
- 【フェーズ4】変動対応フェーズ(後編)― 相続・売買・組織再編
- 【フェーズ5】買取期間満了フェーズ(後編)― 卒FIT・FIP移行
- 【フェーズ6】事業廃止・設備撤去フェーズ(後編)
【フェーズ1】新規申請フェーズ ― 事業計画認定を取るまで
太陽光発電事業を始めるための最初のフェーズです。認定申請そのものだけでなく、その前提となる各種準備が必要となります。認定を受けなければ、FIT/FIPによる売電を行うことはできません。
1-1. FIT/FIP事業計画認定申請
資源エネルギー庁への事業計画認定申請を行います。申請時に求められる主な書類は次の通りです(規模・条件により異なります)。
- 事業計画書(電子申請システムに入力):事業者情報、発電設備の概要、発電事業の計画等を記載。
- 設備の構造図・配線図・仕様書:標準構造図・標準配線図と異なる場合に添付。
- 土地・建物の権利を証明する書類:土地登記簿謄本、賃貸借契約書、土地使用承諾書等。
- 電力会社の接続同意書類
- 関係法令の手続状況を証明する書類
- 戸籍抄本・住民票(個人事業者の場合)、登記事項証明書(法人の場合)
- 委任状(代理申請の場合):2026年1月1日以降は令和8年1月1日以降版の新様式を使用。
1-2. 説明会・事前周知措置に関する手続き
2024年4月1日以降、FIT/FIP制度では、対象となる新規認定申請や重要な変更について、認定申請または変更認定申請の前に、説明会またはポスティング等の事前周知措置を実施することが求められています。一定の重要変更では、原則として変更認定申請の3か月前までに実施する必要があります。関連する書類には、少なくとも次のものがあります。
- 自治体に対する事前相談書
- 説明会開催案内等の書面
- 事前周知措置の実施結果報告資料
- 説明会概要報告書、出席者名簿・議事概要等の添付資料
- 自治体意見への対応方針書
- 説明会・事前周知措置の実施を証する書類
1-3. 土地関連の許認可申請
設置場所に応じて、多岐にわたる許認可申請が発生し得ます。
① 農地関係
- 農地法4条(自己所有地)・5条(取得と転用)の農地転用許可申請
- 一時転用許可申請(営農型太陽光発電を含む)
- 農振除外の手続き(農業振興地域内の場合)
② 林地・森林関係
- 森林法に基づく林地開発許可申請
- 伐採及び伐採後の造林の届出
- 保安林内作業許可申請、保安林解除関係手続
- 小規模林地開発に関する自治体届出
③ 都市計画・造成・盛土関係
- 都市計画法上の開発許可申請、開発行為変更許可・届出
- 宅地造成及び特定盛土等規制法に基づく許可・届出
- 土地の形質変更に関する自治体条例届出
- 土砂災害・残土条例関係の許可・届出
④ 景観・自然環境・文化財関係
- 景観法・景観条例の届出
- 自然公園法上の許可・届出
- 自然環境保全条例上の許可・届出
- 文化財保護法上の埋蔵文化財届出
- 希少種保護条例等に基づく届出・協議資料
- 環境保全協定に関する書類
⑤ 道路・河川・水路関係
- 道路占用許可申請、道路使用許可申請
- 法定外公共物の占用・用途廃止・払下げ申請
- 河川法上の占用・工作物設置許可申請
- 水路占用許可申請
- 道路工事施行承認申請
⑥ 国土利用計画法
- 国土利用計画法に基づく土地売買等届出(一定規模以上の土地取引の場合)
1-4. 環境影響評価・自治体条例に基づく届出
- 環境影響評価法または自治体条例に基づく手続き(一定規模以上の案件)
- 自治体独自の事前届出制度(近年増加傾向)
1-5. 建築基準法上の手続き
太陽光発電設備が建築基準法上の「工作物」に該当するか、確認申請の対象となるかは、設備の形態・高さ・架台・建築物への設置方法等により異なります。関係する手続きには次のようなものがありますが、設計図書その他建築士法上の業務に該当する部分は行政書士業務ではありません。
- 建築基準法その他の法令に基づく工作物関係の許可・届出書類の作成(設計図書その他建築士法上の業務に該当する部分を除く)
1-6. 大規模案件の入札
太陽光発電の一定規模以上は入札制度の対象となります(対象となる出力規模の基準は、制度改正により変わり得るため、当時点の入札制度の内容をご確認ください)。指定入札機関である電力広域的運営推進機関(OCCTO)への手続きが必要です。
1-7. 電子申請および提出先
FIT/FIP認定申請は、原則として再生可能エネルギー電子申請システムを通じて行います。手続きの種類、設備区分またはシステムを利用できない事情等により、別途書面提出を求められる場合があるため、申請時点の資源エネルギー庁の案内をご確認ください。
1-8. このフェーズで行政書士業務に該当し得る手続き
フェーズ1は、太陽光発電事業のライフサイクルの中で最も行政書士業務が集中するフェーズです。次の書類の作成を、他人の依頼を受け、いかなる名目であっても報酬を得て、業として行う場合は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、原則として行政書士または行政書士法人でなければ行うことができません。
- FIT/FIP事業計画認定申請書の作成、および申請手続の代理
- 説明会・事前周知措置に関して認定申請等に添付・提出する報告書、事実証明書類その他の書類の作成(事前相談書、実施結果報告書、自治体意見への対応方針書等)
- 農地関係の許可申請書の作成(農地転用許可申請、一時転用許可申請、農振除外関係書類等)
- 林地・森林関係の許可・届出書類の作成(林地開発許可申請、伐採届出、保安林関係書類等)
- 都市計画・造成・盛土関係の許可・届出書類の作成(開発許可申請、盛土規制法関係書類、土砂災害関係書類等)
- 景観・自然環境・文化財関係の許可・届出書類の作成
- 道路・河川・水路関係の許可・届出書類の作成(道路占用許可、道路使用許可、河川法上の申請等)
- 国土利用計画法に基づく土地売買等届出書の作成
- 環境影響評価に関する官公署提出書類の作成
- 建築基準法その他の法令に基づく工作物関係の許可・届出書類の作成(ただし、建築士法上の設計図書に該当する部分を除く)
他資格・技術者との連携が必要な部分
- 建築士法上の設計図書、構造計算書等 → 建築士業務
- 基本測量・公共測量等に該当する測量成果 → 測量士・測量士補
- 不動産の表示登記、筆界確認等に関する測量・図面 → 土地家屋調査士
- その他の現況測量・配置図等 → 業務内容に応じて測量技術者等と連携
- 電気設備に関する技術図面・構造計算・強度計算・試験記録等 → 設備区分および業務内容に応じ、電気主任技術者、電気管理技術者、電気保安法人、設計者、施工業者その他の技術専門家と連携
次回のご案内
認定取得後の工事計画届出・保安規程等の電気事業法上の手続き、および運転開始後の定期報告・変更認定申請については、中編「運転開始準備と期中運用の手続き」で解説しています。あわせてご参照ください。
当事務所のサポート体制
当事務所は、公認会計士事務所であるとともに、行政書士としての登録も受けており、認定経営革新等支援機関としての登録もあります。太陽光発電のFIT/FIP認定申請をはじめとする官公署への申請書類の作成、事業計画の策定支援、そして受給後の会計処理・税務申告まで、一貫してご対応いたします。
特に太陽光発電事業においては、認定申請そのものだけでなく、事業採算のシミュレーション、資金調達の相談、法人化の検討、消費税・所得税・法人税の取扱い、事業承継の検討、そして事業廃止時の手続きまで、会計・税務と行政手続を横断する論点が多岐にわたります。窓口を分散させずに一貫してご相談いただけることが、当事務所の強みです。
「これまで自社で行っていた申請業務をどう見直せばよいか」「販売施工会社として、法改正後の業務体制をどう整えるか」「太陽光発電事業の採算と税務を総合的に相談したい」「事業廃止・撤去の手続きを検討したい」――こうしたご相談は、どうぞお気軽にお寄せください。
なお、補助金や事業承継の活用については、本ブログの「経営改善計画策定支援事業(405事業)とは」、「事業承継・M&A補助金とは」、「補助金の落とし穴」でも解説していますので、あわせてご参照ください。
※本記事は2026年時点で公表されている情報に基づいて作成しています。改正行政書士法の解釈・運用や、FIT/FIP認定申請の実務は、今後の運用の蓄積により変わり得ます。また、記載した各種手続きの要否・内容・提出書類・行政書士業務の該当性は、事業内容・設置場所・規模等により異なります。実際の対応にあたっては、必ず資源エネルギー庁・関連機関または当事務所までご確認・ご相談ください。