はじめに
毎年4月は、新年度の税制改正が施行される時期です。令和8年度税制改正大綱には、中小企業や個人事業主に影響する項目が多く含まれています。
本稿では、令和8年度税制改正のうち、特に実務への影響が大きいポイントを整理します。なお、本稿執筆時点での情報に基づきますので、実際の適用にあたっては最新の情報をご確認ください。
論点1:所得税関連の改正
所得税については、毎年度小幅な改正が行われています。令和8年度においても、各種控除や特例措置の見直しがなされる見込みです。
確認すべき主なポイント
- 基礎控除、給与所得控除等の各種控除の見直し有無
- 住宅ローン控除の制度内容の変更
- NISA・iDeCo等の制度的拡充
- 各種特別控除の延長・縮減
特に住宅ローン控除については、入居年・住宅の性能(省エネ基準適合等)によって借入限度額や控除期間が異なるため、最新の制度内容の確認が重要です。
論点2:法人税関連の改正
法人税についても、中小企業向けの特例措置を中心に、毎年度の見直しが行われています。
中小企業者の各種特例
以下の特例措置については、適用期限の延長・条件変更の有無を確認する必要があります。
- 中小企業者等の法人税率の特例(年800万円以下の所得に対する15%軽減税率)
- 中小企業投資促進税制
- 中小企業経営強化税制
- 少額減価償却資産の即時償却特例(30万円未満)
これらの特例の多くは時限措置として運用されており、毎年度の改正で適用期限が延長されることが慣例となっています。
交際費課税
資本金1億円以下の中小企業向けの交際費課税の特例(800万円までの全額損金算入、または社外接待飲食費の50%損金算入)の取り扱いも、改正の対象となる可能性があります。
論点3:消費税関連の改正
消費税については、インボイス制度の経過措置縮小が令和8年10月1日から始まります。
インボイス制度の経過措置
免税事業者からの仕入れに係る経過措置は、令和8年10月1日から控除割合が80%から50%に縮小されます。これは令和8年10月1日以降の取引から適用となるため、課税期間の途中で控除割合が変わる事業者も発生します。
簡易課税制度の見直し
簡易課税制度の事業区分やみなし仕入率について、毎年度の改正で見直しが行われる可能性があります。特に、新しい業態(プラットフォーム取引、デジタル役務等)の取り扱いに注意が必要です。
論点4:実務への影響
税制改正の実務への影響は、以下の観点で確認することが重要です。
適用開始時期
税制改正の適用開始時期は、項目によって異なります。
- 令和8年4月1日施行:法人税の多くの改正項目
- 令和9年1月1日施行:所得税の改正項目(多くは令和9年分から適用)
- 令和8年10月1日施行:消費税の経過措置縮小
経理処理の変更
改正内容によっては、会計ソフトの設定変更や、給与計算ソフトのアップデートが必要となる場合があります。各ソフトベンダーの改正対応情報を確認することも実務上重要です。
実務上の留意点
- 税制改正大綱と実際に成立した法律の内容に差異がないか確認する
- 中小企業向けの特例措置の適用期限延長を確認し、計画的に活用する
- インボイス制度の経過措置縮小(10月)に向けた取引先との調整を進める
- 会計ソフト・給与ソフトの改正対応バージョンへのアップデートを実施する
塩野公認会計士事務所の見解
税制改正は毎年度行われ、その内容を把握することは経営者にとって決して容易ではありません。「自社に関係ある改正」と「関係ない改正」を見極めることが、実務上は重要です。
当事務所では、毎年度の税制改正について、お客様の業種・規模に応じた影響度の高い項目を抽出してお伝えしています。改正情報の波に飲まれず、本業に集中できる環境づくりをサポートいたします。
※ 本記事は執筆時点の法令・通達等に基づき作成しております。最新の制度や個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、実務への適用にあたっては最新情報をご確認ください。ご不明点があればお気軽にご相談ください。