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確定申告の特殊論点 – 副業所得の事業所得 vs 雑所得問題

所得税 2026.02.15

はじめに

近年、副業を行う給与所得者が増えています。フリーランスとしての受託、ネット販売、配信活動など、その形態は多様化しています。確定申告の時期になると毎年話題になるのが「副業所得を事業所得とするか、雑所得とするか」の判定問題です。

本稿では、令和4年の所得税基本通達改正後の判定基準と、実務上の判断ポイントを整理します。

論点1:事業所得と雑所得の違い

事業所得と雑所得の違いは、税負担の面で大きな差があります。

事業所得の主なメリット

  • 青色申告特別控除(最大65万円)が適用可能
  • 損失が出た場合、給与所得等との損益通算が可能
  • 青色事業専従者給与が認められる
  • 30万円未満の少額減価償却資産の特例が使える

雑所得の特徴

  • 青色申告特別控除は適用不可
  • 損失の損益通算は不可(雑所得内の通算のみ可能)
  • 帳簿付けの義務は限定的

したがって、副業を「事業所得」として申告できるなら、税務上のメリットは大きいことになります。しかし、その判定基準が論点となります。

論点2:令和4年通達改正の概要

令和4年に改正された所得税基本通達35-2では、事業所得と雑所得の判定について、以下の基準が示されました。

収入金額300万円基準

収入300万円以下の場合は、一般的には雑所得と判断されるケースが多いが、最終的には事業性の有無により個別判断されます。

帳簿書類の保存

事業所得と認められる「事実」の最も重要な要素が、帳簿書類の保存です。具体的には、以下のような記録が求められます。

  • 複式簿記または簡易簿記による記帳
  • 請求書、領収書等の保存
  • 事業に関する契約書等の保存

論点3:社会通念上の事業性

収入金額300万円基準と帳簿の保存に加えて、「社会通念上の事業性」という観点での判定も重要です。

事業性の判断要素

過去の判例(最高裁平成16年8月23日判決等)では、以下の要素が総合的に判断されています。

  • 営利性、有償性の有無
  • 継続性、反復性の有無
  • 自己の危険と計算における事業遂行性の有無
  • 精神的、肉体的労力の程度
  • 人的、物的設備の有無

「儲かるかどうかわからないが、自分の責任で継続的に労力をかけて取り組む」という性質があれば、事業性が認められやすい

論点4:給与所得との関係

給与所得者の副業については、以下の観点で慎重な判断が必要です。

本業との時間配分

給与所得者の副業について、本業に大半の時間を割いている場合、副業の事業性は否定されやすい傾向があります。これは「精神的、肉体的労力の程度」の観点から見ると、副業に十分な労力をかけているとは言いがたいためです。

収益性の継続

副業を始めた当初は赤字でも、数年内に黒字化する見込みがあるかどうかも判断要素です。「ずっと赤字で、給与所得との損益通算で節税している」という構造は、税務調査で否認されるリスクが高くなります。

実務上の留意点

  • 収入金額300万円以下の副業は、原則として雑所得と理解する
  • 事業所得として申告する場合、複式簿記による記帳と書類保存を徹底する
  • 赤字の損益通算による節税は、長期化すると否認リスクが高まる
  • 副業の事業性について判断に迷う場合、税務署または税理士に事前相談する

塩野公認会計士事務所の見解

副業所得の事業所得・雑所得の判定は、税法上の判断基準だけでなく、その方の働き方の実態を踏まえて総合的に検討する必要があります。

特に最近は、SNSでの「節税ノウハウ」として、不適切な事業所得申告を勧める投稿も見かけます。短期的には税負担が軽くなっても、税務調査で否認された場合、追徴課税と加算税の負担は決して小さくありません。当事務所では、副業に関する適切な確定申告のサポートを行っております。

※ 本記事は執筆時点の法令・通達等に基づき作成しております。最新の制度や個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、実務への適用にあたっては最新情報をご確認ください。ご不明点があればお気軽にご相談ください。