BLOG
Article

5月決算法人が押さえるべき決算実務のポイント

法人税 2025.05.15

はじめに

3月決算法人と並んで、5月決算は中堅企業や不動産業を中心に少なくない割合を占めます。3月決算と比べると会計事務所側のリソースに余裕があり、丁寧な決算対応がしやすい時期でもありますが、その一方で、5月決算特有の論点を見落とすケースも少なくありません。

本稿では、5月決算法人の決算実務において特に注意すべきポイントを、人件費の期ズレ、賞与引当金、消費税の期間按分の3つの観点から整理します。

論点1:人件費の期ズレ問題

5月決算法人の場合、決算月末までに発生した人件費のうち、6月支給分の給与・賞与の按分計算が論点になります。

給与の未払計上

法人税基本通達9-2-43では、決算期末までに支給期が到来している給与については、未払計上が認められています。具体的には、5月末締め6月25日支給の給与については、5月分として未払計上することが可能です。

一方で、6月締め6月支給のような場合は、当期の損金として計上することはできず、翌期の費用となります。締め日と支給日の関係を就業規則・給与規程と突き合わせて確認することが重要です。

社会保険料の期ズレ

社会保険料は当月分の保険料を翌月末に納付する仕組みのため、5月末時点では4月分が未納付の状態です。会社負担分について、適切に未払費用として計上する必要があります。

特に新入社員が4月入社で5月末までに社会保険料の控除が始まっていない場合、計上漏れが発生しやすいので注意が必要です。

論点2:賞与引当金の計算

夏季賞与(6月~7月支給)について、5月決算法人は支給見込額の計上タイミングが論点になります。

引当金の要件

法人税法上、賞与引当金は原則として損金算入が認められませんが、以下の要件を満たす「未払賞与」については損金算入が可能です(法人税法施行令72条の3)。

  • 各人別の支給額が、決算日までに通知されていること
  • 通知された支給額を、通知した全員に対して、決算日の翌日から1か月以内に支払っていること
  • 支給額について、損金経理により未払金として計上していること

実務上、「決算日までに通知」の証跡として、賞与支給通知書の控えを保管することが重要です。口頭通知では税務調査で否認されるリスクがあります。

論点3:消費税の期間按分

5月決算法人で見落とされやすいのが、固定資産税や保険料などの「年払い経費」の期間按分です。

継続的役務の提供

例えば、4月に1年分の損害保険料を一括払いした場合、5月決算法人では、5月分のみが当期の費用となり、残りの11か月分は前払費用として翌期に繰り延べる必要があります。

一方で、法人税基本通達2-2-14(短期前払費用)の特例を適用すれば、支払日から1年以内に役務提供を受けるものについては、支払時の損金算入が認められます。ただし、この特例は継続適用が要件であり、毎期同じ処理を行う必要があります。

固定資産税の取り扱い

固定資産税は、賦課決定された日の属する事業年度の損金として計上することができます(法人税基本通達9-5-1)。5月決算法人の場合、4月~5月にかけて賦課決定通知が届くケースが多く、当期の損金として全額計上することが可能です。

実務上の留意点

  • 給与規程・就業規則を再確認し、給与の締め日・支給日のサイクルと未払計上の整合性を取る
  • 賞与支給通知書は、内容証明郵便でなくても構わないが、後で「いつ通知したか」を客観的に示せる形で保管する
  • 短期前払費用の特例を適用する場合、初年度の処理を継続適用する旨を社内で共有しておく
  • 固定資産税の賦課決定通知は、必ず期中の経理担当者に共有してもらう体制を構築する

塩野公認会計士事務所の見解

5月決算法人は、3月決算法人と比べて会計事務所側のスケジュールに余裕がある時期です。だからこそ、表面的な数値の確認だけでなく、人件費の期ズレや短期前払費用の継続適用といった「論点として意識しないと見落とす項目」に踏み込んだ確認をする価値があります。

また、5月決算法人は7月の中間申告の準備も重なります。決算と中間申告を一体で計画することで、より精度の高い経営支援が可能になります。当事務所では、決算月に応じた個別最適化された決算サポートを提供しております。

※ 本記事は執筆時点の法令・通達等に基づき作成しております。最新の制度や個別事情により取扱いが異なる場合がありますので、実務への適用にあたっては最新情報をご確認ください。ご不明点があればお気軽にご相談ください。